社長インタビュー       

養肝漬宮崎屋 の六代目、宮崎慶一社長

「足元に転がっている大切な宝物を、見落とす事なく生きていきたい!」

―養肝漬とはどのような漬物ですか?
宮崎氏(以下M) 瓜の中にしその実、しその葉、大根、きゅうり、しょうがを入れて醤油で漬けています。
―養肝漬の名前の由来は何ですか?
M 夏の食欲のない時でも、侍は体力を落とさないようにご飯を食べなくてはならない。そんなときに、この漬物でお茶漬けをして体力を落とさないようにしていた事から、「侍の肝を養う漬物」つまり養肝漬と名付けられた訳です。
―養肝漬は宮崎屋の商標となっていますが・・・
M 漬物というのは、もともと各家庭でも漬けられていたもので、その一つに養肝漬があり、弊店が「養肝漬」という名前を商標にしました。 ―他の地域でも養肝漬のような漬物はあるのですか? M あります。養肝漬のように、瓜の中に詰め物をした漬物を「鉄砲漬」とか「印ろう漬」と言って、全国各地にあります。 ―養肝漬と言う名前は、聞いただけでは誤解を招きそうな名前ですが・・・
M よく「羊羹を漬けているのか」「甘いのか」「何のレバーを漬けているのか」などと聞かれます。
―商売をしていく上で、それはプラスに作用していますか?
M 若い頃は、説明が面倒で売り難いと思っていましたが、30代後半から考え方が変ってきました。これまで全国各地の物産展に出店してきましたが、その都度、養肝漬の名前についての話題が出てきます。その事でお客さんと会話する機会に恵まれ、気に入って名前を覚えてもらった上に、買って頂く事が多いのです。上野においでになる観光客も同様で、最初の一つを売るには、説明にとても時間が掛かりますが、そういうお客さんはリピート率が高く、非常に大切なお客さんになっていく事に気付いたのです。五年ほど前から、そういうお客さんを対象にダイレクトメールを送って、通信販売をしています。
―現在、インターネットでの販売は行っていますか?
M 準備は出来ていますが、代金の受け渡しなどセキュリティがしっかり整ってからに始めようと思っています。
―今後の経営方針は?
M 漬物は浅漬けと古漬けに分かれるのですが、シェアでは浅漬けが98%で古漬けが2%です。養肝漬は古漬けで、一見、厳しいように思われるかもしれません。古漬けはお金になるのに時間がかかるのです。例えば養肝漬ですと、夏に収穫した瓜が、養肝漬として売り出されるまでに二年掛かります。大企業が資本投下してまで、参入する意味がないのです。浅漬けは現在、価格による過当競争に巻き込まれています。それを思うと、古漬けはわずか2%のシェアですが、まだまだ商売していく道はあると思っています。
―まちかど博物館にも登録されていますが・・・
M 伊賀の人は私も含めて伊賀の事で知らない事が多すぎます。生まれた時から身近にあるものは空気みたいなものだから、その素晴らしさに気付かなくても仕方がありませんが、そんなものの良さを再発見したくてまちかど博物館に登録しました。現在、弊店には祖父や曾祖父が趣味で集めたものを展示しています。父や私にとっては特別なものではないのですが、他地域からお見えになった方々には、昔はどこでも目にしたのに今となっては珍しい物を再発見する事が出来たという感覚の様です。養肝漬もしかり、シェア―という観点からみれば古漬けという小さな枠の中ですが、歴史や風土などの物語性を持ったお漬物自体が特殊性を持ち、より希少性が高まっています。漬けるのに大変な手間を要するだけでなく、売る事にも説明の必要なお漬物ですが、今でこそやりがいを感じています。

宮崎慶一さん 上野市中町出身 上野高―立教大 ―住商フーズ鰍へて昭和56年 養肝漬宮崎屋鞄社 平成11年 同社代表取締役社長就任